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障害特性を職場にどう伝える?「困る場面・自分の工夫・お願いしたい配慮」で整理する方法

障害特性を職場に伝えるときに、困る場面・自分の工夫・お願いしたい配慮の3つで整理する方法を示したイラスト

「障害のことを、会社にどう説明したらいいか分からない」 「配慮事項を書いてくださいと言われても、何を書けばいいのか思いつかない」 「困っているのは確かなのに、うまく言葉にできない」

障害者雇用での就職活動や、就職後の面談で本当によく聞く悩みです。

最初にお伝えしたいのは、診断名を詳しく説明することが、障害特性を伝えることではないという点です。

たとえば「ASDがあります」とだけ伝えても、職場の人には「仕事のどこで困るのか」「何をすれば働きやすくなるのか」までは分かりません。

一方で、

「口頭で複数の指示を一度に受けると抜けやすいので、自分でもメモを取っています。重要な指示はチャットにも残してもらえると助かります」

と伝えると、職場の人は「じゃあチャットで送ろう」と具体的に動けます。

この記事のゴールは、障害について上手に説明できるようになることではありません。職場の人が具体的に対応できる情報に変換することです。そのために、困る場面 → 自分でしている工夫 → 職場へお願いしたい配慮の順番で整理する方法を、例文つきで紹介します。

目次

障害特性は「診断名」だけでは伝わらない

同じASD、同じADHDでも、仕事で困る場面は人によってまったく違います。精神障害や知的障害でも同じです。

職場の人が本当に知りたいのは、診断名そのものではなく、

  • 仕事のどんな場面に影響が出るのか
  • 何をすれば働きやすくなるのか

の2つです。診断名は「前提情報」として伝え、話の中心は仕事の場面に置きます。

障害特性を伝える3つの順番

1. どんな場面で困るか

「苦手なこと」ではなく「困る場面」で書くのがコツです。

× 集中力がありません

○ 周りで会話が多い場所では、入力内容を取り違えやすくなります

「集中力がない」だと人柄の話に聞こえますが、「会話が多い場所で入力を取り違える」なら、席や作業時間の工夫で対応できる話になります。

2. 自分でどんな工夫をしているか

配慮をお願いする前に、自分でやっていることをセットで伝えます。

  • 指示はその場でメモを取り、復唱して確認する
  • 作業はチェックリストで抜けを確認する
  • 予定や締切はカレンダーに登録する
  • 疲れのサインが出たら、決めた休憩を取る

これがあると、職場の人は「全部こちらで何とかしなければ」と身構えずに済みます。「この人は自分でも対策している。足りない部分を手伝えばいい」と受け取ってもらえるからです。

3. 職場に何をお願いしたいか

お願いは、職場の人がそのまま実行できる形まで具体的にします。

× 静かな職場を希望します

○ 集中して入力する作業のときは、人の出入りが少ない席を相談させてもらえると助かります

「希望します」で止めず、「どの作業のときに」「何を」「どのくらい」まで言えると、相手は判断しやすくなります。

3点セットの例文

ASDの例

困る場面:急な予定変更があると、次に何をすればいいか分からなくなることがあります。

自分の工夫:その日の作業予定をカレンダーで管理しています。

お願い:予定が変わるときは、変更後の優先順位をその場で一度確認させてもらえると、すぐに切り替えられます。

ADHDの例

困る場面:複数の業務を同時に受けると、どれかが抜けることがあります。

自分の工夫:受けた仕事はすぐにタスク一覧へ書き出しています。

お願い:急ぎの仕事を依頼されるときは、他の仕事との優先順位も一緒に教えてもらえると助かります。

精神障害の例

精神障害の場合は、診断名の一般論ではなく、自分の体調変化のサインで書くのがポイントです。

困る場面:疲れがたまると、午後に集中力が落ちてミスが増えることがあります。

自分の工夫:ミスが続いたら疲れのサインと考えて、早めに短い休憩を取るようにしています。

お願い:休憩を取るときに、ひと声かけるだけで席を外せるようにしてもらえると安心です。

配慮事項は「できないこと一覧」にしない

応募書類でよく見かけるのが、

  • 電話はできません
  • 残業はできません
  • 複数の指示は無理です

と並べただけの配慮事項です。これだと、企業は「この人にどんな仕事をお願いできるのか」がイメージできません。

× 複数の指示が苦手です

○ 複数の業務を同時に指示されると優先順位に迷うため、優先順位を確認できれば対応できます

「この条件なら働ける」に言い換える。これだけで、同じ内容でも受け取られ方が大きく変わります。配慮をお願いするのは「わがまま」ではなく、働き続けるために必要な情報共有です。

障害のことは、どこまで伝える必要がある?

この記事は、障害を伝えて働く場合(障害者雇用や、一般枠で障害を開示して働く場合)を前提にしています。そのうえで、病歴のすべてを話す必要はありません。伝えるのは、今回の仕事に関係することに絞れば十分です。

  • 仕事の中で起こりやすいこと
  • 体調が崩れはじめたときのサイン
  • そのとき自分がすること
  • 職場にお願いしたいこと

この4つが整理できていれば、職場の人は対応を考えられます。逆に、子どもの頃の経緯や通院歴を細かく話しても、仕事の場面に結びつかなければ相手は判断に困ります。

面接と入社後では、伝える内容が変わる

面接で伝えること

面接では、採用を判断するのに必要な範囲で「働くうえで必要な配慮」を伝えます。3点セットを1〜2個、短く話せれば十分です。

障害者雇用促進法では、募集・採用の段階での配慮は、本人からの申出をきっかけに企業と話し合う仕組みになっています。厚生労働省の合理的配慮指針では、希望する配慮を具体的に言うのが難しい場合は、「何に困っているか」を伝えれば足りるとされています。うまく言葉にできなくても、困る場面が伝われば話し合いは始められます。

入社後に共有すること

入社後は、実際に一緒に働く上司や支援者と、もっと具体的に決めていきます。

  • 指示の出し方(口頭か、文字か、両方か)
  • 相談するタイミングと相手
  • 体調が悪いときの連絡方法
  • 急な変更や緊急時の対応

採用後については、企業の側から「職場で困っていることはないか」を確認することが指針で定められています。定期面談や上司との1on1があれば、そこで話してください。決まった場がなければ、上司や人事に「配慮のことで相談したい」と自分から申し出て構いません。

自分で整理するのが難しいときは「就労パスポート」

厚生労働省の「就労パスポート」は、働くうえでの自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮を、支援機関と一緒に整理して事業主などに伝えるためのツールです。チェック項目が具体的に並んでいるので、「何から書けばいいか分からない」という人の手がかりになります。

押さえておきたい点が3つあります。

  • 採用選考時の必須提出書類ではありません。 使うかどうかは本人が決めます
  • 見せる相手も、自分が希望する範囲で選べます
  • 一度作ったら終わりではなく、更新していくものとされています

様式と「活用の手引き」は厚生労働省のサイトからダウンロードできます。一人で埋めるより、就労移行支援やハローワークなど支援機関の担当者と話しながら作るほうが、自分では気づけなかった特徴が見えてきます。

伝える内容は、一度決めたら終わりではない

職場実習や就職、部署異動、上司の交代を経験すると、

「思っていた配慮と違った」 「別の工夫のほうが合っていた」

と分かることがよくあります。それで大丈夫です。伝える内容は、更新する前提で持っておくものです。

僕たちが就労定着支援で大事にしているのも、この「見直し」です。最初にお願いした配慮が今も必要か、別のやり方のほうが合っているかを、本人・職場・支援者で一緒に確かめていきます。

一人で整理するのが難しいと感じたら

ここまで読んでも「自分の困る場面がうまく言葉にならない」という方は少なくありません。自分のことは、自分がいちばん見えにくいものです。

第三者と一緒に整理すると、「伝えすぎ」も「伝えなさすぎ」も防げます。

  • 就職前なら:就労移行支援、ハローワークの専門援助部門(障害のある方の職業相談を担当する窓口)
  • どのサービスを使うか一緒に決めたいなら:計画相談支援
  • 就職後なら:障害者就業・生活支援センター(就職後の相談にも使えます)、就労定着支援(就労移行支援などを利用して就職した方が対象)

アイ・ワークス(兵庫県明石市・神戸市)では、就労移行支援・生活訓練・就労定着支援を行っています。「配慮事項を一緒に書いてほしい」という段階からでも相談できます。

よくある質問

障害名は必ず伝えないといけませんか?

診断名まで伝える義務はありません。障害者雇用で応募する場合、障害者手帳の確認で企業に伝わるのは、基本的に手帳の種類と等級です。面接や職場で話す中心は診断名ではなく、仕事で困る場面とお願いしたい配慮です。ただ、上司が特性を理解する助けになる場合は、診断名を添えたほうが話が早いこともあります。応募先から記載方法の指定がある場合はそれに従ってください。

配慮事項をたくさん書くと不利になりませんか?

数が多いこと自体より、「できないこと一覧」になっていることのほうが不利に働きやすいです。自分の工夫とセットにして、「この条件ならできる」の形にしてください。優先度の高いものから2〜3個に絞るのも一つの方法です。

面接で全部話す必要がありますか?

ありません。面接では採用の判断に必要な範囲で十分です。細かい指示の出し方や体調不良時の連絡方法などは、入社後に上司や支援者と具体的に決めていきます。

就労パスポートは企業に必ず提出するものですか?

いいえ。厚生労働省も、採用選考時の必須提出書類ではないと明記しています。作るか、誰に見せるかは本人が決めます。

入社後に配慮の内容を変えてもいいですか?

変えて構いません。実際に働いてみて合わなかった配慮は、上司や支援者と相談して見直します。見直す前提で考えておくほうが、長く働き続けやすくなります

アイ・ワークスのサービスについて

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