職場の人や、電車で向かいに座った人に、顔をじっと見られて落ち着かなかった。 「何か言いたいことがあるのかな」「もしかして障害の特性?」と気になって、調べた方もいると思います。
先に結論をお伝えします。
- 人の顔をじっと見てしまうことは、ASD(自閉スペクトラム症)や知的障害の特性で起きることがあります
- ただし、見ただけで障害かどうかを判断することはできません。障害と関係なく起きることも多くあります
- じっと見ている本人に、相手を困らせる気持ちはないことがほとんどです
- 困っているときは、「どうしてほしいか」を短く具体的に伝えるのが一番です
じっと見てしまうのは、どんなとき?
就労支援の現場では、次のような理由で「じっと見てしまう」ことがあります。理由は一つとは限らず、重なることもあります。
1. 視線を外すタイミングが分かりにくい
ASDでは、視線の使い方に特徴が出ることがあります。「目を合わせない」がよく知られていますが、反対に、いつ目をそらせばよいか分からず、見続けてしまう人もいます。
国立障害者リハビリテーションセンターなどの研究では、ASDの人は目のあたりを見る時間が短い一方、短い課題をくり返すうちに視線の手がかりを使えるようになった、という報告があります。
2. 「じっと見ると相手が気にする」が伝わりにくい
人の顔を見続けると相手が気まずく感じる、という決まりは、ほとんど誰からも教わりません。周りを見ながら自然に身につけるものです。
ASDや知的障害のある方の中には、こうした言葉にされない決まりが伝わりにくい方がいます。本人は「見てはいけない」と知らないだけ、ということもあります。
3. 気になったものに注意が向き続ける
見ているのは顔そのものではなく、眼鏡、髪型、服の柄、ほくろなど、気になった一点のこともあります。興味を引いたものから注意を外しにくい特性があると、結果として「顔をじっと見ている」ように映ります。
4. 相手の表情を確かめ続けている
「怒っていないか」「話を分かってもらえているか」が不安で、相手の表情を確かめ続けている場合もあります。表情を読み取るのが苦手な人ほど、長く見て確かめようとすることがあります。
5. 障害と関係なく起きることも
考えごとをしていて、視線の先にたまたま人がいただけ。視力が弱くて、相手を見ようと目をこらしていた。こうしたことは、障害の有無に関係なく誰にでもあります。
じっと見るという行動だけで、その人に障害があるかどうかは分かりません。
ASDの顔つきや表情の印象については、こちらの記事でも書いています。

本人に、その気はないことが多い
じっと見られると、「にらまれている」「何か言いたいのか」「好意があるのか」と、気持ちを読み取りたくなります。
でも、ここまでの理由では、相手を困らせるつもりで見ているわけではありません。見られた側が感じた「嫌な感じ」と、見ていた側の気持ちは、多くの場合つながっていません。
だからこそ、気持ちを推測するより、「見られて困っている」という事実を伝えるほうが解決に近づきます。
職場で困っているときの伝え方
言葉にされない決まりが伝わりにくい人には、「もう少し周りに気をつけて」では伝わりません。何をすればよいかを、短く具体的に伝えます。
伝わりにくい言い方
- じろじろ見ないで
- 失礼だよ
- 空気を読んで
伝わりやすい言い方
- 「話すときは、ときどき手元の資料に目を移してもらえると話しやすいです」
- 「作業中に見られると集中しにくいので、見ないでもらえますか」
- 「用事があるときは、声をかけてもらえるとうれしいです」
ポイントは3つです。責める言葉を使わない。「何をしてほしいか」を一つだけ言う。できたら「ありがとう、話しやすいです」と返す。
直接言いにくいときは、上司や、本人に支援機関がついていればその担当者に相談してください。支援者が間に入ると、本人にとって分かりやすい形で伝え直せます。
職場ですれ違いが起きやすい場面と、本人・上司の両方ができる工夫は、こちらの記事にもまとめています。

電車や街中で、知らない人に見られて怖いとき
知らない人に見られて怖いと感じたときは、無理に話しかけたり、理由を確かめたりしなくて大丈夫です。席や車両を移る、その場を離れる、駅員や近くの人に声をかける。自分が安心できる行動を優先してください。
相手に悪気がないことが多いのは事実ですが、それはあなたが我慢しなければならない理由にはなりません。
「じっと見てしまう」と言われたことがある方へ
人から指摘されて、ショックを受けた方もいるかもしれません。見てしまうのは、あなたの性格が悪いからではありません。
次のような工夫で、困る場面を減らせることがあります。
- 話していないときは、手元や資料に目を置く
- 話すときは、相手の目ではなく、眉間や鼻のあたりを見る
- 数秒たったら一度、資料や窓の外に目を移す
- 気になるものがあるときは、見る代わりに「その眼鏡すてきですね」と言葉にしてみる
「どのくらい見ていたら長すぎるのか」は、一人では確かめにくいものです。信頼できる人に「見すぎていたら教えて」と頼んでおく方法もあります。
職場での人づきあいの困りごとが続くときは、診断がなくても相談できる場所があります。明石市で使える就労支援サービスと事業所の探し方は、こちらにまとめています。

よくある質問
まとめ|気持ちを読むより、してほしいことを伝える
人の顔をじっと見てしまうことは、ASDや知的障害の特性で起きることがありますが、それだけで障害かどうかは判断できません。多くの場合、本人に相手を困らせる気持ちはありません。
困ったときは、相手の気持ちを推測するより、「どうしてほしいか」を短く具体的に伝えるほうが、お互いに楽になります。
働きながら職場の人づきあいに困っている方は、障害者就業・生活支援センターなどに相談できます。就労移行支援などを使って就職した方は、就労定着支援も使えます。これから働く準備をしたい方は、就労移行支援が相談先になります。明石市の事業所の一覧は上の記事にまとめています。
支援者の方へ:利用者さんの「じっと見てしまう」が職場で問題になったときは、本人に「見ないで」と伝えるより、「話すときは資料を見る」のように視線の置き場所を一緒に決めるほうが定着しやすくなります。



