「尊大型ASD」という言葉を調べている方の中には、こうした職場での困りごとを抱えている方もいるのではないでしょうか。最初に大切なことをお伝えします。
ASD(自閉スペクトラム症)のある方の一部について、周囲から「尊大に見える」「自分の考えを強く主張する」と感じられる言動を説明する際に使われることがある便宜的な表現です。
そのため、
と決めつけることはできません。この記事では、ラベルをつけるのではなく、職場で実際にどんなすれ違いが起きやすいのか、そしてどうすれば働きやすくなるのかを考えます。
「尊大型ASD」は正式な診断名ではない
ASDの主な特徴には、対人コミュニケーションや社会的なやり取りの難しさ、限定的な興味やこだわり、変化への対応の難しさなどがあります。ただし、同じASDでも特性の現れ方は一人ひとり違います。
「尊大型」「積極奇異型」「受動型」といった呼び方だけで、その人の性格や支援方法を判断することはできません。大切なのは、その人が実際にどんな場面で困っているのかを見ることです。
なぜ職場で「上から目線」に見えることがあるのか?
1.自分の考えをはっきり伝えすぎる
本人としては、
「正しい情報を伝えた」
「間違いを指摘した」
だけのつもりでも、
「それは違います」
「そのやり方は効率が悪いです」
と直接的に伝えることで、相手からは強い言い方に聞こえることがあります。問題は「意見を持つこと」ではありません。
という点です。
2.役割や上下関係が分かりにくい
仕事には、
- 誰が最終判断するのか?
- どこまで自分で決めてよいのか?
- 誰に確認するのか?
という役割があります。この線引きが曖昧だと、
「より良いやり方を思いついたから変更した」
「自分の方が詳しいので指示した」
という行動が突然、起こることがあります。本人に悪意がなくても、周囲には
「勝手に決める」
「立場を超えて指示する」
と映る場合があります。
3.曖昧な指示に納得できない
「適当にやっておいて」
「いい感じにまとめて」
「普通は分かるでしょう」
といった曖昧な指示は、ASDのある方にとって理解しにくい場合があります。分からないまま進めるより、
「なぜですか?」
「具体的にどこまでですか?」
と確認する方が本人にとっては合理的です。しかし、質問の仕方によっては、
と受け取られてしまうことがあります。
4.注意を「自分自身の否定」と受け取りやすいことがある
仕事の方法を修正されたとき、
「やり方を変えてください」
という話が、
「自分は間違っている」
「自分を否定された」
という感覚につながる人もいます。
その結果、
「でも、このやり方の方が正しいです」
と強く説明しようとして、さらに対立が深まることがあります。
職場で起こりやすい4つの場面
例えば、
- 会議で他の人の意見をすぐ否定する
- 上司からの指示に理由を求め続ける
- 同僚の仕事のやり方を細かく指摘する
- 自分の担当範囲を超えて判断する
といった場面です。
ここで、
「性格が悪い」
「プライドが高すぎる」
と考えてしまうと、対応が難しくなります。まず、何が起こったのかを行動レベルで整理することが重要です。
職場のトラブルを減らす5つの工夫
1.性格ではなく、具体的な行動を伝える
「偉そうに話さないで」では、何を変えればいいのか分かりません。
例えば、「会議で相手が話し終わる前に否定すると、話しにくいと感じる人がいます」と具体的に伝えます。
2.役割と決定権を明確にする
「ここまでは自分で判断してOK」「ここから先は上司に確認」と線を引きます。
役職名だけではなく、具体的な行動で決める方が分かりやすくなります。
3.指示は具体的にする
「早めに」ではなく、「今日15時まで」「A→B→Cの順番」など、期限や優先順位を具体化します。
発達障害のある方への合理的配慮の例としても、業務指示を明確にし、作業手順を分かりやすく示す方法が挙げられています。
4.反論をすぐ「反抗」と判断しない
本人が理由を聞いているだけなのか?本当に指示を拒否しているのか?一度分けて考えてみます。
「疑問があるときは、まず一度指示を確認してから質問する」など、質問のルールを決める方法もあります。
5.フィードバックは「事実→影響→次にしてほしいこと」
例えば、「今日の会議で、Aさんの説明途中に3回発言しました」→「Aさんが最後まで説明できませんでした」→「次回は相手が話し終わってから意見を伝えてください」という順番です。
「態度が悪い」ではなく、本人が修正できる情報にします。
本人側でできる工夫
職場で人間関係のトラブルが続く場合、自分の意見を言わないようにする必要はありません。少し伝え方を変えるだけでも印象は変わります。
例えば、「違います」ではなく、「僕はこう理解していますが、確認してもいいですか?」
「その方法は非効率です」ではなく、「別の方法も考えたのですが、提案してもいいですか?」という言い方です。
意見の内容ではなく、相手が受け取りやすい入口をつくるという考え方です。
支援機関を使う方法もある
本人と会社だけで解決しようとすると、お互いに疲れてしまうことがあります。その場合は、
- 就労定着支援
- 就労移行支援
- 障害者就業・生活支援センター
- ハローワーク
- 地域障害者職業センター
などの支援機関と一緒に整理する方法があります。本人の特性を会社へ一方的に説明するのではなく、
「この仕事の、この場面で困っている」
という具体的な状況から調整していくことが大切です。
よくある質問
まとめ|「性格」ではなく「すれ違いの仕組み」を見る
職場で、
「上から目線」
「言うことを聞かない」
「プライドが高い」
と思われている人がいたとしても、それだけで「尊大型ASD」と決めつけることはできません。
大切なのは、誰が悪いのかを決めることではなく、どの場面ですれ違っているのかを整理することです。
指示を具体的にする。
役割を明確にする。
フィードバックを行動レベルで伝える。
それだけでも、職場でのすれ違いが減ることがあります。ラベルよりも、その人が働きやすくなる方法を一緒に探していきましょう。

