市役所の窓口で、こう聞かれた方がいると思います。
その場で意味が分からず、なんとなく「はい」と答えた。あるいは、書類だけ渡された。
セルフプランは、ご本人が希望して選ぶことのできる正式な制度です。
一方で、全国の状況を見ていくと、相談支援事業所に頼みたくても頼めず、結果としてセルフプランになる、いわゆる
も起きています。
では、実際にセルフプランを利用している人は、どのくらいいるのでしょうか。この記事では、厚生労働省の資料をもとに、セルフプランを「数字」から見ていきます。
セルフプランって、何ですか?
サービスを使うには、計画が要ります。その計画を自分でつくるやり方が、セルフプランです。
相談支援事業所に頼まず、ご本人がつくります。ご本人の了解のもとで、ご家族や支援者がつくることも認められています。
国が正式に認めているやり方です。勝手な抜け道ではありません。
厚生労働省の事務処理要領には、2つの場合が挙げられています。
- 近くに相談支援事業所がない場合
- ご本人が希望する場合
どれくらいの人が、セルフプランなのですか?
ここからが本題です。
厚生労働省が令和6年に調べた数字があります。
| 対象 | セルフプランの割合 |
|---|---|
| 大人(計画相談支援) | 15.8% |
| 子ども(障害児相談支援) | 30.7% |
大人は、6人に1人。子どもは、3人に1人です。
子どもの方が、倍近く多い。ここは覚えておいてよい数字だと思います。
「珍しいやり方」ではありません。むしろ、教室に30人子どもがいたら10人分がセルフプラン、という規模です。
地域によって、どれくらい違いますか?
同じ調査に、もうひとつ数字があります。
地域差が、0.0%から60.6%まであります。
つまり、こういうことです。
- セルフプランがまったくない自治体がある
- 6割を超える自治体もある
同じ国の、同じ制度です。それでもこれだけ開きます。
なので「セルフプランは少数派です」とは言えません。「よくあることです」とも言えません。全国の話としては、どちらも不正確です。お住まいの市町村がどうかで、まったく景色が変わります。
・厚生労働省「各自治体の支給決定者(児)数とセルフプラン率(令和6年3月末時点)
「望まないセルフプラン」は、なぜ起きるのですか?
ここは、国の資料を見ると事情が見えてきます。
厚生労働省の社会保障審議会障害者部会に出された資料には、次の記載があります。
読み飛ばしそうな一文ですが、重い内容です。
セルフプランは本来、ご本人が希望して選ぶことのできる仕組みです。ところが実際には、
「相談支援を利用したい。でも頼める相談支援事業所が見つからない」
という理由で、結果的にセルフプランになっている人がいます。
こうした状態は、一般に「望まないセルフプラン」と呼ばれることがあります。
理由のひとつが、相談支援専門員の不足です。
相談支援事業所へ頼みたくても、新規受付を停止している。何か月も順番待ちになる。けれど、その間も障害福祉サービスを利用したい。
そこで、
「相談支援が見つかるまで、とりあえずセルフプランで申請する」
ということが起こります。
もちろん、セルフプランそのものが悪いわけではありません。
問題なのは、本人がセルフプランを希望して選んだのか、それとも相談支援を利用できないために事実上セルフプランしか選べなかったのか、という違いです。
国もこの問題を認識しており、同じ資料の中で、相談支援専門員を計画的に養成していく方向を示しています。
全国のセルフプラン率に大きな地域差がある背景には、こうした「望まないセルフプラン」の存在もあります。
セルフプランを選ぶと、何がなくなりますか?
ここが、いちばん知られていないところです。
複数の自治体が、はっきり書いています。
| なくなるもの | どういうことか |
|---|---|
| 事業所どうしの連絡調整 | 話が食い違ったとき、間に入る人がいない |
| 定期的な見直し | 「その後どうですか」と来てくれる人がいない |
| 関係する人が集まって話す場 | 全員で情報をそろえる機会がない |
大阪市は、ホームページにこう書いています。
セルフプランを利用する場合、サービス提供事業者等の調整についての支援やモニタリングなどのサービスを受けることはできません。
「モニタリング」というのは、様子を見にくることです。
つまりセルフプランは、計画づくりを自分でやる、というだけの話ではありません。その後のフォローも自分でやるしかない。ということです。
では、セルフプランは避けるべきですか?
そうは思いません。
向いている場合が、ちゃんとあります。
- 使うサービスが1つに決まっていて、調整することがない
- ご本人やご家族が制度にくわしく、手続きに慣れている
- 待っていられない事情があり、今すぐ始めたい
- 自分のことは自分で決めたい
どれも、正当な理由だと思います。
問題は、違いを知らないまま決まってしまうことです。
窓口で3秒で聞かれて、3秒で答える。それで数年が決まってしまうのは、もったいない。
お金の差は、ありますか?
ありません。
相談支援事業所に頼んでも、利用する方の負担はありません。セルフプランのほうが安い、ということもありません。
「頼むとお金がかかるのでは」と思って、セルフプランを選ぶ方がいます。それは誤解です。
ここは、はっきりお伝えしておきたいところです。
あとから、変えられますか
変えられます。ただし、条件があります。
大阪市は、切り替えについてこう書いています。原則として、次にサービスの更新または変更を申請したときです。
「思い立った日に、すぐ切り替わる」わけではありません。
逆もできます。相談支援を使っていて、やはり自分でやりたいとなれば、セルフプランに変えられます。
一度決めたら終わりではない。でも、いつでも自由に、でもない。ここは正確に知っておいてください。
なお、切り替えの手続きの細かいところは、市町村によって違います。国の統一様式はありません。
私の立場も、書いておきます
ここまで読むと、「相談支援を使え」と言っているように見えるかもしれません。
私は相談支援専門員です。相談支援を使ってもらえば、私の仕事が増えます。そこは隠しません。
そのうえで書きます。
決めるのはご本人です。
上に挙げた「向いている場合」に当てはまるなら、セルフプランで何の問題もありません。
大事なのは、違いを知ったうえで選ぶことです。それだけです。
窓口で、こう聞いてみてください
その場で決めなくて大丈夫です。「一度考えてもいいですか」と言って構いません。
そのうえで、ひとつ質問をしてみてください。
「この地域の相談支援事業所は、今どれくらい空いていますか」
これで、待ち時間の目安が分かります。すぐ頼めるなら、頼めばいい。半年待ちなら、その間をどうするかを考えればいい。
ただ、この質問には、もうひとつの意味があります。
セルフプランを選んだのか、選ばされたのか。これは、自分が「望まないセルフプラン」になっていないかを確認する質問でもあります。
国が「本人や保護者が希望しない場合もセルフプランとなっている」と書いたのは、この境目のことです。
空きがあって、それでも自分でやると決めたなら、それは自分で選んだセルフプランです。一方、相談支援を利用したいのに空きがなく、仕方なくセルフプランにしたのであれば、いわゆる「望まないセルフプラン」状態です。
どちらでも構いません。決めるのはご本人です。ただ、自分がどちらなのかは、知っておいてください。
よくある質問
参考にした資料
- 障害者相談支援事業の実施状況等の調査結果 概要(厚生労働省・令和6年)https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001457589.pdf
- 社会保障審議会障害者部会 第149回 資料(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001568051.pdf
- 計画相談支援について(大阪市)https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000173623.html
- サービス等利用計画(セルフプラン)について(宇都宮市)https://www.city.utsunomiya.lg.jp/kenko/shogai/service/1004187.html
※制度の運用は市町村によって違います。セルフプランをどこまで認めるか、切り替えの手続きをどうするかにも地域差があります。この記事は2026年8月時点で調べたものです。実際の手続きは、お住まいの市役所にご確認ください。


