という言葉で検索して、この記事にたどり着いた方もいると思います。
身近な人について、
「表情が独特な気がする」「目の合わせ方に特徴がある」「ASDの人には共通する顔つきがあるの?」
と感じたのかもしれません。最初に、大事なことをお伝えします。
「積極奇異型だから、この顔つきになる」という見分け方はできません。
ASDは、顔立ちだけを見て判断するものではありません。
一方で、ASDの方では視線の使い方や表情の読み取りなどに特徴がみられることがあり、それが周囲から「表情が独特」「顔つきが違う」と感じられる一因になる可能性はあります。国立障害者リハビリテーションセンターの研究でも、ASDの方では相手の目を見る割合や視線手がかりの利用、表情認知などに特徴が報告されています。
ここは、顔の形の話と、表情や視線の話を分けて考えることが大切です。
そもそも「積極奇異型」とは?
「積極奇異型」は、現在の正式な医学的診断名ではありません。
ASDの正式な診断名は「自閉スペクトラム症」です。国立障害者リハビリテーションセンターがDSM-5-TRに基づいて示している発達障害の名称でも「自閉スペクトラム症(ASD)」とされています。
一方、「積極奇異型」は英語で active-but-odd と呼ばれ、Wingらが自閉症の社会的な関わり方の違いを説明するために提案した分類の一つとして研究されてきました。
研究では、他者との交流を自分から求める一方、会話が一方的になったり、相手との距離が近くなったりするなど、社会的な関わり方に特徴が現れるスタイルとして説明されています。
つまり、「顔のタイプ」を表す言葉ではありません。
人との関わり方の傾向を説明するために使われてきた言葉です。
「顔つきに特徴がある」と感じるのはなぜ?
ここで混同されやすいのが、
顔立ちと表情・視線です。
顔立ちとは、
- 目の形
- 鼻の形
- 顔の輪郭
など、身体的な外見そのものです。
一方、
- どこを見るか
- どれくらい相手を見るか
- 表情がどう変化するか
- 相手の表情をどう読み取るか
は、コミュニケーション行動です。
ASDでは、社会的コミュニケーションの難しさが特徴の一つとされており、視線や表情の使い方についてもさまざまな研究があります。そのため、周囲の人がこうした違いをまとめて「顔つき」と表現している場合があります。
でも、
「この顔だからASD」
「この表情だから積極奇異型」
と判断することはできません。
視線が合いにくい=相手を無視している、ではない
ASDについてよく語られるのが「目が合わない」という特徴です。
国立障害者リハビリテーションセンターの研究では、ASDの実験参加者は、定型発達者より顔の目の領域を見る時間が短いという結果が報告されています。一方で、短時間の試行によって視線の手がかりを活用できるようになった結果も示されています。
ここから大切なのは、
とは限らないということです。
目を合わせながら話すこと自体に負担を感じる人もいます。
視線だけを見て、
- 「失礼だ」
- 「人の話を聞いていない」
と決めつけると、本当の困りごとを見落としてしまいます。
積極奇異型では「人に興味がない」とは限らない
ASDというと、
「人付き合いを避ける」「一人でいたがる」
というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかしASDの現れ方は一人ひとり違います。積極奇異型という言葉が使われる場合は、むしろ自分から積極的に他者へ関わろうとする人を指します。
例えば、
- 初対面でもかなり近い距離から話しかける
- 好きなテーマを長時間話す
- 相手の反応に気づかず話し続ける
- 親しくなるまでの距離が一気に縮まる
といった形で現れることがあります。これはWingの「active-but-odd」という社会的交流スタイルについての研究で説明されてきた特徴とも重なります。ただし、これも全員に当てはまるわけではありません。人は「型」よりずっと複雑です。
職場では「態度が悪い」と誤解されることもある
僕たちが就労支援をしている中でも、大切だと思うのがここです。
例えば、
- 上司とあまり目を合わせない
- 表情の変化が少ない
- 相手が忙しそうでも話しかけ続ける
- 話す距離が近い
- 興味のある話を長く続ける
こうした行動だけを見ると、
「態度が悪い」「空気が読めない」「自分勝手」
と受け取られることがあります。でも、本人には悪意がない場合があります。必要なのは性格の評価ではなく、
を整理することです。
「ちゃんと空気を読んで」では伝わりにくい
例えば、
と言われても、何を変えればよいのか分からないことがあります。
それより、
など、具体的な行動にすると分かりやすくなります。
国立障害者リハビリテーションセンターも、発達障害のある方への伝え方として、短く分かりやすい言葉を使い、一つずつ伝えることや、ルールを具体的に示すことを紹介しています。
ではなく、
これは支援でも職場でも、とても大切だと思います。
ASDは「型」だけでは理解できない
- 積極奇異型
- 受動型
- 孤立型
こういった言葉を知ることで、
「あの行動には、こういう背景があるのかもしれない」
と考えるきっかけになることはあります。でも、型に人を当てはめ始めると逆効果です。
同じASDでも、
- 得意なこと
- 苦手なこと
- 感覚の特徴
- コミュニケーション
- 経験
- 環境
は大きく異なります。発達障害情報の公的な資料でも、ASDではコミュニケーション、行動、感覚などさまざまな特徴が示されています。
ではなく、
を見る方が、支援には役立ちます。
顔つきから診断しようとしない
インターネットには、「ASDの顔の特徴○選」のような情報もあります。でも、誰かの顔を見て、「この人はASDだ」と判断するのは避けた方がよいでしょう。
ASDについて正式な評価や診断が必要な場合は、医療機関など専門家による評価が必要です。一方、「職場で会話がうまくいかない」「人との距離感でトラブルになる」「働き続けるのがしんどい」といった生活や就労上の困りごとなら、診断名を決める前でも相談できる場所があります。
僕たち就労支援の仕事も、その一つです。
よくある質問
まとめ|顔ではなく、その人の困りごとを見る
と検索した方に、一番お伝えしたいのはこれです。
一方で、ASDでは、
- 視線
- 表情の読み取り
- 会話
- 人との距離感
などに特徴が現れることがあります。その違いが、周囲には「顔つき」「表情」「雰囲気」の違いとして感じられているのかもしれません。でも、見るべきなのは顔ではありません。
- 本人が何に困っているのか。
- どんな伝え方なら分かりやすいのか。
- どんな環境なら力を発揮できるのか。
そこを見ることの方が、ずっと大切です。


