「就労移行支援に興味はあるけれど、自分に向いているのか分からない」
「見学へ行ってみたものの、毎日通える気がしない」
「できれば早く働きたい。2年も通う必要があるのだろうか」
就労移行支援を調べ始めた方から、よくうかがう言葉です。最初にお伝えしたいことがあります。
いまの生活の状況、体調、就職までに準備したいことによって、「いまは就労移行が合いやすい」「いまは別の支援から始めたほうがよい」という違いがあるだけです。同じ方でも、半年後には答えが変わることがあります。
この記事では、向き不向きを性格で判断するのではなく、いまの状態から考える7つのポイントを整理します。
就労移行支援は、何を目指すサービスか?
厚生労働省は就労移行支援を、一般就労等を希望する障害のある方に対して、知識や能力の向上、実習、職場探しなどを通じて、適性に合った職場への就労が見込まれる方を対象とするサービスと位置づけています。
ポイントは2つです。
- 目指す先が「一般企業などへの就職」であること
- 就職までの準備期間として使うこと
利用期間は、利用者ごとに標準期間である24か月の範囲内で設定します。市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められた場合に限り、最大1年間の更新ができます。
つまり、ずっと通い続ける場所ではありません。ここが就労継続支援A型・B型との一番大きな違いです。
就労移行支援が合いやすい状態
次のような状態にある方は、就労移行支援の仕組みが力を発揮しやすいと考えています。
一般企業への就職を目指している
まずここが出発点です。福祉サービスの中で雇用契約を結んで働きたいのか、一般企業で働きたいのか。目的地が違うと、選ぶサービスも変わります。
一般企業で働くことを目指しているなら、就労移行支援は制度上ぴったり重なります。
就職活動を一人で進めることに不安がある
- 履歴書や職務経歴書をどう書けばいいか分からない
- 面接で障害のことをどこまで話すか決められない
- どんな配慮をお願いすればいいか整理できていない
- 求人票を見ても、自分に合うかどうか判断できない
こうした場面で、相談しながら進められる相手がいる状態をつくれます。
自分に合う仕事や配慮を整理したい
「何が得意で、何が苦手か」を言葉にできていないまま就職活動を進めると、面接で伝えられず、入社後に「そんな配慮は聞いていない」というすれ違いが起きます。
就労移行支援は、この整理に時間を使える場所です。
就職の前に、実習や訓練で確かめたい
求人票と実際の仕事は違います。実習で職場に入って、通勤できるか、その作業が続けられるか、その環境で働けるかを確かめてから応募を決められるのは、就労移行支援の強みです。
就職後の定着まで支援を受けたい
就職はゴールではなくスタートです。就労移行支援を経て一般就労した場合、就職から6か月を経過した時点で就労定着支援という別のサービスにつなげることができます。利用できる期間は最大3年間です。
就職前だけでなく、その後まで見通して支援を組み立てられることを知っておいてください。

「いまは」別の選択肢から考えたほうがよい場合
ここからは、就労移行支援以外を検討したほうがよい場合です。利用してはいけないという意味ではありません。いまの状態と目的に、別の支援のほうが合っているという話です。
すでに一人で就職活動を進められている
体調が安定していて、自分の特性や必要な配慮も整理できていて、応募や面接も一人で進められている。この状態であれば、福祉サービスを経由せずに就職活動を進める道があります。
一般就労を目指す場合の窓口としては、次のようなところがあります。
- ハローワーク:求職登録を行い、専門の職員や職業相談員が、障害の種類や程度に応じた職業相談・紹介、職場定着の指導を行います
- 地域障害者職業センター:職業評価、職業指導、職業準備訓練、職場適応援助といった専門的な職業リハビリテーションを行います
- 障害者就業・生活支援センター:就業面と生活面の相談を一体的に受けられます
- 障害者職業能力開発校・障害者委託訓練:職業訓練を受けられます
「支援を使う=福祉サービスに通う」ではありません。通所を伴わない支援もあります。
生活リズムや外出そのものに大きな負担がある
- 決まった時間に起きるのが難しい
- 外出自体に強い負担がある
- 体調の波が大きく、予定を立てにくい
この段階で毎日の通所を前提にすると、続けること自体が目的になってしまいます。生活リズムや体調を整えるところから始められる生活訓練(自立訓練)のほうが、結果的に就職への近道になることがあります。

福祉サービスの中で、雇用契約を結んで働きたい
一般企業への就職ではなく、支援のある環境で、雇用契約を結んで給与を受け取りながら働きたい。この希望であれば、就労継続支援A型が対応します。A型には利用期間の制限がありません。
なお、新たにA型を利用する場合は、2027年4月以降、後述する就労選択支援を経ることが原則となる予定です。
自分に合う働き方そのものが、まだ分からない
「働きたい気持ちはあるけれど、一般就労なのか、A型なのか、B型なのか、自分でも分からない」
この状態のときに使えるのが、2025年10月1日から始まった就労選択支援です。次のセクションで説明します。
就労移行支援・A型・B型・生活訓練の違い
| 目指す先 | 雇用契約 | 利用期間 | |
|---|---|---|---|
| 就労移行支援 | 一般企業などへの就職 | なし | 標準24か月(最大1年の更新あり) |
| 自立訓練(生活訓練) | 生活リズム・体調を整える | なし | 標準24か月(最大1年の更新あり) |
| 就労定着支援 | 就職後に働き続ける | ー | 最大3年(就職後6か月経過から) |
| 就労選択支援 | 働き方を選ぶための整理 | なし | 原則1か月 |
| 就労継続支援A型 | 支援のある環境で働く | あり | 制限なし |
| 就労継続支援B型 | 支援のある環境で働く | なし | 制限なし |
4つのサービスの違いをさらに詳しく知りたい方は、こちらで図解しています。

迷ったときに使える「就労選択支援」
2025年10月1日から、就労系障害福祉サービスに就労選択支援が加わりました。現在、就労系の障害福祉サービスは、就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労定着支援の5種類です。
就労選択支援は、ご本人が就労先や働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を使って、希望や就労能力、適性に合った選択を支援するサービスです。
具体的には、こうした流れになります。
- 短期間の生産活動などを通じて、就労に関する適性、知識、能力を確認し、希望を整理する
- ご本人と関係機関の担当者が集まってケース会議を開き、意向を確認したうえで意見を出し合う
- 整理した結果をご本人と共有し、必要に応じて関係機関との連絡調整を行う
- 地域にどんな事業所や仕事があるかを情報提供する
支給決定の期間は原則1か月です。
ここは誤解されやすいので、はっきり書いておきます。
就労選択支援は、働けるかどうかを判定する場ではありません。厚生労働省の通知にも、就労選択支援の事業者が、就労の可否や利用すべきサービス、利用する事業所を判断・決定するものではない、と明記されています。あくまで、ご本人が選ぶための材料を一緒に整理する場です。
いま、誰が使えるのか
2025年10月以降、新たに就労継続支援B型を利用する意向がある場合は、原則として先に就労選択支援を利用することになりました。ただし、50歳に達している方、障害基礎年金1級を受給している方、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった方などは、この限りではありません。
そして、新たに就労移行支援やA型を利用したいと考えている方は、ご本人の希望に応じて就労選択支援を利用することができます。
つまり、「就労移行が自分に合っているか分からない」という段階の方は、いま、希望すればこの仕組みを使えます。
なお、2027年4月以降は、新たにA型を利用する場合や、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合についても、就労選択支援によるアセスメントを受けた方を対象とする予定とされています。
ひとつ注意点
就労選択支援は、まだ始まったばかりの制度です。お住まいの地域に事業所がない場合や、利用までに待つ場合もあります。近隣に事業所がないときは、従来どおり就労移行支援事業所などによる就労アセスメントが認められる取り扱いもあります。
まずは、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口か、計画相談の相談支援専門員に「就労選択支援は使えますか」と聞いてみてください。
自分の場合を考える7つのチェックポイント
ここまでを踏まえて、いまの状態を確認してみてください。
- 一般企業などへの就職を目指していますか?
- 就職までに準備しておきたいことがありますか?
- 週に何日かでも、定期的に通うことができそうですか?
- 就職活動を一人で進めることに不安がありますか?
- 自分の特性や必要な配慮を、言葉で説明できますか?
- 実習で、仕事との相性を確かめたいと思いますか?
- 就職したあとも、相談できる先があったほうが安心ですか?
YESの数で機械的に決めないでください。このチェックは点数表ではありません。答えに迷った項目こそ、見学のときに聞いてほしいところです。
たとえば3番で迷ったなら、「週何日から始められますか」を見学で確認してください。5番で迷ったなら、「自己理解を整理するプログラムはありますか」と聞いてください。迷いは、そのまま質問になります。
見学で「どんなプログラムがありますか」だけを聞かない
見学に行くと、多くの事業所がプログラムの一覧を説明してくれます。ただ、一覧を聞いても「自分がそこで何をするのか」は分かりません。聞いていただきたいのは、この質問です。
「私の場合、ここで何をすることになりそうですか?」
そのうえで、次を確認してください。
- いつごろから就職活動を始めることになりますか?
- 私のように社会人経験がある場合は、何から始めますか?
- 週何日から始められますか。増やしていくペースはどう決めますか?
- 実習の機会はどのくらいありますか。どんな企業がありますか?
- 個別の訓練と、集団のプログラムの割合はどのくらいですか?
- 就職したあとの支援は、どこまでやってもらえますか?
この質問に具体的に答えられる事業所であれば、あなたの状況を見て支援を組み立ててくれる可能性が高いと考えていただいてよいと思います。
事業所ごとの訓練内容の違いがどのくらいあるのか、実例として、アイ・ワークスで行っているカリキュラムをこちらで紹介しています。

就労移行が合わなくても、失敗ではありません
通い始めてから、「思っていたのと違った」「いまの自分には早かった」と感じることはあります。
そのときに、支援を選び直すことはできます。生活訓練に切り替える方もいますし、体調を整えてから再度就労移行に戻る方もいます。順番どおりに進まなければいけない制度ではありません。
「合わなかった」は、あなたに問題があったという意味ではなく、そのときの状態と支援の組み合わせが合わなかったというだけのことです。
アイ・ワークスの考え方
アイ・ワークスでは、「とりあえず就労移行を勧める」ことはしていません。
見学や相談にお越しいただいた方に、まずお聞きするのは「いま何に困っているか?」「どこを目指したいか?」です。そのうえで、就労移行が合いそうなら就労移行を、生活訓練から始めたほうがよさそうならその理由を、うちではない場所のほうがよさそうならその窓口を、お伝えしています。
どの支援が合うか分からないという段階でも構いません。状況を整理するところから、一緒に考えます。
よくある質問
【出典】
- 厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」(就労系障害福祉サービスの5種類、各サービスの定義) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40524.html
- 厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」(就労移行支援の対象者・標準利用期間24か月、A型・B型の利用期間、就労定着支援の対象・3年) https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001737834.pdf
- 厚生労働省「就労選択支援について」/課長通知「就労選択支援の実施について」(令和7年9月30日改正)(2025年10月1日施行、対象者、B型の原則化と例外、就労移行・A型希望者は本人の希望に応じて利用可、支給決定期間は原則1か月、可否の判定を行うものではないこと、2027年4月以降の予定) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56733.html
- 厚生労働省「障害者の方への施策」(ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、障害者職業能力開発校、委託訓練の役割) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/shougaisha/index.html

