「就労移行支援でAIを勉強する意味ってあるの?」
「ChatGPTを使えると、就職に有利になる?」
「パソコンが得意じゃなくても使える?」
生成AIが仕事で使われる場面が増える中、こうした質問も少しずつ増えてきました。先に結論を言うと、就労移行支援で大切なのは、AIを使いこなす“技術者”になることではありません。仕事の中で、
を分けられるようになることの方が、ずっと重要です。
厚生労働省は、就労移行支援について、就労に必要な知識・能力を高める訓練や、求職活動、職場開拓、就職後の定着に必要な支援を行うサービスとしています。つまり、生成AIそのものが必須カリキュラムというわけではありませんが、実際の仕事に必要なスキルとして取り入れることは、就労移行支援の目的と矛盾するものではありません。
就労移行支援で生成AIを学ぶ意味
ChatGPTなどを使うと、数秒で文章が出てきます。だからこそ、
「もう文章を書く練習はいらないのでは?」
と思うかもしれません。でも、実際の仕事ではそう簡単ではありません。
AIが作った文章が、
- 相手に失礼ではないか
- 数字や制度が間違っていないか
- 本当に質問への回答になっているか
- 社内ルールに違反していないか
を確認するのは人間です。生成AIの訓練で身につけたいのは、AIに答えを出してもらう能力ではなく、
です。
就労移行支援でできる生成AIの実践訓練
生成AIの使い方は、単に「質問して答えてもらう」だけではありません。実際の職場を想定した訓練に組み込むことで、仕事を進めるための補助ツールとして使う練習ができます。
メールや報告文の「たたき台」を作る
「何から書けばいいか分からない」
という人にとって、真っ白な画面から文章を作るのは大きな負担です。そこで、
「上司に、作業が予定より1日遅れることを伝える文章を作って」
とAIに依頼して、出てきた文章を自分で修正します。大切なのは、AIの文章をそのまま送らないことです。
という流れを繰り返し練習することが大切です。
長い指示を整理する
発達障害のある方から、
「口頭で一度にいろいろ言われると、何から手を付ければいいか分からなくなる」
という相談を受けることがあります。
例えば、
「この作業を、今から取り掛かる順番に分けてください」
とAIに依頼し、
という形に整理する練習もできます。AIは「仕事を代わりにやる人」ではなく、仕事を見える形に整理する補助役として使えます。
面接練習をする
生成AIに面接官役をしてもらう方法もあります。
例えば、
「障害者雇用の一般事務職の面接官として、質問を一問ずつしてください」
と依頼します。答えた後に、
「今の回答で分かりにくかったところを教えてください」
と聞けば、自分の説明を振り返る材料になります。もちろん、最終的には支援員との模擬面接で、人とのやり取りも練習する必要があります。
AIだけで完結させないことがポイントです。
パソコンが得意でなくても生成AIは使える
生成AIというと、
という印象を持つ方もいます。でも、基本的な利用だけならプログラミングは必要ありません。むしろ最初は、
「今日やることを3つに整理して」
「この文章を短くして」
「分からない言葉を中学生にも分かるように説明して」
くらいから始めれば十分です。高度なプロンプトを覚えることより、困ったときに何をAIへ相談すればよいかを考える力の方が実務では役立ちます。
生成AIを使うときに絶対に外せない3つのルール
便利なツールだからこそ、安全に使うためのルールも必要です。
個人情報や会社の機密情報を安易に入力しない
氏名、住所、病歴、障害名、企業の未公開情報などを、そのまま外部の生成AIサービスへ入力してよいとは限りません。利用するサービスが、入力した情報をどのように取り扱うのかを確認する必要があります。
AIの回答をそのまま信じない
生成AIは、もっともらしい間違いを返すことがあります。制度、法律、数字、会社情報などは必ず一次情報で確認します。
就職したら会社のルールを優先する
会社によって、「このAIは使用可」「個人アカウントは禁止」「社内データは入力禁止」などルールが異なります。AIを使うことと、ルールを守ることはセットです。
就労移行支援を選ぶときに確認したいこと
生成AIに興味があるなら、見学時に、
「AIを使った訓練はありますか?」
だけでなく、
「AIを使って、実際の仕事を想定したどんな練習をしていますか?」
と聞いてみてください。
- AIに質問するだけの講座なのか。
- メール、資料作成、情報整理など実務の中で使うのか。
- 出力を人が確認するところまで訓練するのか。
- 個人情報のルールも教えているのか。
ここまで聞くと、その事業所がAIを「流行のツール」として扱っているのか、「仕事につながるスキル」として扱っているのかが見えてきます。
まとめ|AIを使えることより「AIと一緒に仕事を完成できること」
これから仕事の中でAIに触れる機会は増えていくでしょう。だからといって、全員がAIの専門家になる必要はありません。大切なのは、
- AIに相談する。
- 出てきたものを確認する。
- 必要なら直す。
- 最後は自分で責任を持つ。
この流れです。生成AIは、「自分の代わりに働いてくれる魔法の道具」ではありません。でも、うまく使えば、苦手な部分を補いながら、自分の力を仕事で発揮するための心強い道具になります。

