「就職してからそろそろ5年が経つんです。会社から『契約が変わる?』って言われたんですが、何が変わるんですか?」
就労移行支援を卒業した方から、こんな相談が届くことが増えてきました。就職から5年という節目を迎える方が出てきた今、あらためてこの制度を整理しておきたいと思います。
制度の話は難しく聞こえがちですが、「自分に関係あること」として読んでいただけるよう、アイ・ワークスの現場目線でわかりやすく解説します。
「有期雇用」と「無期雇用」、何が違う?
まず言葉の整理からはじめましょう。
有期雇用
とは、「1年ごとに契約を更新する」「6ヶ月ごとに更新する」といった、期間が決まっている雇用契約のことです。契約社員・パート・アルバイトといった働き方の多くがこれにあたります。
無期雇用
とは、期間の定めのない雇用契約のことです。「いつまで」という終わりが設定されていないため、雇用が安定しやすいという特徴があります。
ひとつ大切なことをお伝えしておきます。「無期雇用=正社員」ではありません。
無期雇用に転換されても、給与・仕事内容・勤務時間などの条件は、原則としてそのまま引き継がれます。「正社員になれる」と思っていたのに、実際は待遇が変わらなかった、というギャップが生まれやすいポイントです。ここは後ほど詳しく触れます。
無期転換ルールとは?
無期転換ルールとは、2013年に改正された労働契約法にもとづく制度です。
ひとことで言うと、「同じ会社で有期雇用が通算5年を超えたら、無期雇用への転換を申し込む権利が生まれる」というルールです。そして重要なのが、会社側はその申し込みを断ることができないという点です。
5年のカウントはこうなる
入社時に「契約期間○年」と定められた労働契約を締結します。契約社員・パートタイム・アルバイトなど、雇用形態の名称にかかわらず、期間の定めがあればすべて「有期雇用契約」にあたります。障害者雇用枠での就職でも、契約書に期間が明記されていれば同じです。
契約期間が終わるたびに「更新」が繰り返されます。1年契約であれば1年ごと、6ヶ月契約であれば半年ごとに更新の手続きが発生します。この更新のたびに、通算の契約期間が積み上がっていきます。
ただし、注意点が一つあります。契約と契約の間に6ヶ月以上の空白期間(無契約の期間)があると、それまでの通算期間がリセットされます。これを「クーリング」といいます。離職・休職などがある場合は確認が必要です。
同じ会社との有期雇用契約の通算期間が、5年を超えた時点がポイントです。「5年ちょうど」ではなく、5年を超えた契約が始まった瞬間に次のステップへ進みます。
たとえば1年契約の場合、5回目の更新後(6年目)の契約期間に入った時点で条件を満たします。3年契約の場合は、1回目の更新後(4年目)の契約期間に入った時点です。
通算5年を超えた契約期間中、労働者には無期転換を申し込む権利(申込権)が生まれます。この権利は法律(労働契約法第18条)にもとづくもので、会社の就業規則や個別の契約書に記載がなくても自動的に発生します。
ここで多くの方が誤解されるのですが、申込権が発生しても、転換は自動では行われません。 権利が生まれた後、自分から会社に申し込んで初めて転換が成立します。
申込権が発生した契約期間中に、会社に対して「無期雇用に転換したい」と申し込みます。申し込みの方式に決まった書式はありませんが、後で記録が残るよう書面(メール・書類)での申し込みをお勧めします。
申し込みを受けた会社は、法律上これを断ることができません。申し込みが成立すると、次の契約期間の初日から無期雇用に転換されます。給与や仕事内容などの労働条件は、会社の就業規則等にもとづいて定められます(自動的に上がるわけではありません)。
無期転換申込権の発生タイミング

ここで見落としがちなのが「本人から申し込まないと転換されない」という点です。
権利は自動的に発生しますが、転換は自動ではありません。本人が会社に対して意思表示をしてはじめて成立します。申し込みのタイミングは、申込権が発生した契約期間中であることも覚えておきましょう。
転換されると何が変わる?何が変わらない?
変わること
一番大きいのは雇用の安定です。
有期雇用の場合、契約期間の終わりに「更新しない」と言われれば、そこで雇用が終わります。しかし無期雇用になると、解雇するには客観的・合理的な理由が必要になります。「契約満了だから」という理由での雇い止めがなくなる、というのが最大の変化です。
変わらないこと
給与・仕事内容・勤務条件は、原則としてそのままです。
無期転換によって自動的に待遇が上がるわけではありません。転換後の労働条件は、会社の就業規則や別途定めた規程によって決まります。
アイ・ワークスからひとこと
「無期転換=正社員になれる」
と期待されている方には、事前にこの点をしっかり確認することが支援のポイントです。転換後に「思っていたのと違った」というギャップが生じると、職場への不信感につながることもあります。申し込む前に、会社の就業規則や転換後の条件を一緒に確認するようにしています。
例外・特例はある?
すべての有期雇用に無期転換ルールが適用されるわけではありません。以下のケースは特例として扱われます。
定年後に再雇用された場合:都道府県労働局長の認定を受けた会社では、無期転換申込権が発生しない特例が設けられています。定年退職後に嘱託社員として働いている方が当てはまるケースです。
高度な専門的知識を持つ有期雇用労働者:(年収1,075万円以上の高度専門職など)も、一定期間は申込権が発生しない特例があります。
大学・研究開発法人の研究者や教員:については、5年ではなく10年を超えた時点で申込権が発生するという特例が適用されます。
就労移行支援の利用者・卒業生の方には、上記の特例が当てはまるケースはほとんどないと思われますが、「自分はどうなのか?」と気になる場合は、会社の人事担当や支援者に確認することをお勧めします。
卒業生・ご家族へ―5年の節目に確認したいこと
就職から5年というのは、本当にあっという間です。気づかないまま申込権の発生するタイミングを過ぎてしまう方も少なくありません。
以下のことを、5年の節目に確認してみてください。
① 今、何年目かを確認する 入社日と契約形態を振り返り、有期雇用であれば通算何年になるかを確認しましょう。
② 申し込みは口頭でも有効だが、書面が安心 転換の申し込みに特定の書式はありませんが、後で記録が残るよう書面で伝えることをお勧めします。
③ 会社が「自動的に転換してくれる」とは限らない 会社が制度を把握していないケースや、申し込みがあってはじめて動き出すケースもあります。「言わなくても変わるだろう」と待っているだけでは転換されないことがあります。
④ 申し込みを断られたら、すぐに相談を 無期転換の申し込みを会社が拒否することは法律違反です。そのような場合は、都道府県労働局の「無期転換ルール特別相談窓口」に相談することができます。
現場より――障害者雇用でも無期転換は起きています
「有期雇用=一般雇用の話」と思われがちですが、障害者雇用枠での就職でも、無期転換ルールは適用されます。
アイ・ワークスの卒業生にも、障害者雇用枠で1年契約を更新し続け、5年を超えるタイミングで無期転換の申し込みをした方がいます。
会社側が制度をきちんと把握していたケースもあれば、本人からの申し出をきっかけに手続きが進んだケースもありました。「障害者雇用だから関係ない」ということはありません。
また、派遣社員として働いている場合は少し扱いが異なります。派遣社員の雇用主はあくまで派遣会社であるため、無期転換の申込権は「派遣先の会社」ではなく「派遣会社」との契約年数をもとに判断されます。派遣という働き方をしている方は、派遣会社に確認することが重要です。
「自分の場合はどうなるの?」と疑問に思ったら、ぜひアイ・ワークスにご相談ください。一緒に確認しましょう。
よくある質問
まとめ
就職してからそろそろ5年という節目を迎える方は、ぜひ一度立ち止まって確認してみてください。
- 有期雇用で通算5年を超えたら、無期転換を申し込む権利が生まれる
- 会社は断れないが、自分から申し込む必要がある
- 転換後も給与・条件はすぐには変わらないことが多い
- 障害者雇用枠でも適用される
アイ・ワークスでは、就職後の定着支援の中でこうした制度の確認も行っています。「5年目が近づいてきた」「転換の申し込みを会社にしたい」など、どんな段階のご相談でもお気軽にどうぞ。



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